なぜ新薬の開発にはお金がかかるのか?

 アバナフィルは2012年にアメリカで認可された比較的新しい薬ですが、もうジェネリックが出てしまいました(アバナフィルは成分名かつジェネリックの薬名、純正薬の名前はステンドラと言います。ややこしいですね)。たぶん製薬会社はこれに頭を抱えているでしょう。新薬の開発には最低でも数十億円というとんでもないお金がかかるからです。
 なぜお金がかかるかというと、まず有効成分を見つけることの大変さがあります。化学物質の分子構造を見ただけでは、それがどういう作用を示すかはよく分かりません。化学物質によっては民間伝承などの裏付けがあることがありますが、実のところ、そういうものはあまり信用できないのが現実です。結局新薬を開発するには実際にいろいろな化学物質を作ってみて、実験動物に投与してみる必要があるのです。製薬科学者は日々いろいろな物質を合成しているのですが、その中で有益な作用があるのは数千個に一個と言われています。アバナフィルも途中で開発が日本の会社からアメリカの会社に移るなど、紆余曲折の末10年以上かかってやっとできた薬です。
 さらにお金がかかるのが、安全性の確認です。サリドマイドの事件以来、薬の安全性に関する規則が厳しくなっており、新薬は危険な副作用がないかどうかについて、様々な実験を行う必要があります。実際実験動物に投与したときは何の問題もなかった薬が、人間に投与する実験(いわゆる治験)で不採用になることもあります。そうなると数年間の研究が水の泡です。
 このように新薬開発には莫大な研究資金がかかります。ちなみにその後の製造にはそんなにお金がかかりません。ジェネリック医薬品が安いのはそのせいです。この点では製薬産業は、映画やソフトウェア開発などのコンテンツ産業と似たところがあります。