アバナフィルによる血液濃度変化と健康障害

アバナフィルは、日本ではまだ厚生労働省の製造販売承認を得ていませんが、アメリカにおいてはFDAの承認を受けている勃起不全症(ED)の治療薬です。ステンドラという商品名で製造販売されています。日本において勃起不全症治療薬として厚生労働省の製造販売承認を得ているのは、バイアグラ、レビトラ、シアリスの3種類です。これらの薬と同様の作用機序を持っていて、ホスホジエステラーゼⅤを阻害することにより陰茎部の血管を拡張させ、血流量を増加させることにより、勃起を引き起こします。しかし、アバナフィルは他の3剤と比較してより即効性を示す医薬品となっています。バイアグラとレビトラは性行為の1時間前、シアリスは性行為の3時間前に服用することが推奨されていますが、アバナフィルは性行為の30分前の服用が推奨されています。
このように利点も存在しますが、欠点も存在します。これらとの違いについて他剤併用による血液濃度変化とそれに伴い起こる健康障害に焦点をあて解説します。
アバナフィルは作用機序もバイアグラ、レビトラ、シアリスに類似していますが、薬物間相互作用も類似しています。類似の作用点を有する硝酸薬との併用禁忌に関しては同様です。そして肝臓で代謝酵素CYP3A4を競合する薬剤に関しても、作用増強の引き金になるとして併用禁忌のものが存在します。バイアグラ、レビトラ、シアリスの中で、このCYP3A4の関わる併用禁忌薬が最も多いのはレビトラで、HIVプロテアーゼ阻害薬やアゾール系抗真菌薬が禁忌になっていますが、アバナフィルはこれに加え、一部の抗生剤(クラリスロマイシン、テリスロマイシン)が併用禁忌となっています。これらを併用すると、CYP3A4による代謝を両者が競合し、アバナフィルの血中濃度が高くなり、頭痛などの副作用が発現しやすくなります。つまり既存の類似薬より他剤との飲み合わせに注意が必要だということです。

薬の特許について

 薬の特許は基本的には他の発明品と同じで、特許出願から20年の独占販売を可能とするものです。ただし場合によっては最大5年間の延長が認められることがあります。これは薬という商品は、開発から発売まで時間がかかるからです。特許は新薬の成分が完成した時点で出願されるのですが、この時点では安全性に関わる試験が行われていない場合が多く、危険性がないことが認められて販売が許可されるまで、10年以上かかることがほとんどです。つまり新薬の特許を20年で一律にしてしまうと、独占販売できる期間は10年以下になり、製薬会社は開発費を回収できない可能性があります。そのため、新薬は特許権の延長が認められているのです。
 ところでアバナフィルは2012年に認可されたにもかかわらず、もうジェネリックが出ています(実はアバナフィル自体ジェネリックの名前で、純正薬はステンドラと言います)。特許権は切れていないはずなのに何故そんなことが起きたかというと、ジェネリックを販売している会社があるインドの法律のおかげです。インドでは薬の特許権がほとんど認められず、何か新薬ができた途端にジェネリックが発売されてしまうのです。他の国でアバナフィルのジェネリックを作ると違法行為になるのですが、インドの会社がインド国内で作っている限り、それは合法です。そしてそのジェネリックを他の国にいる消費者が輸入するのも合法です。かくして日本の消費者も格安でアバナフィルを買えるわけです。もちろんこれについて先進国の製薬会社は非難していますが、インド産のジェネリックがないと途上国の貧しい人は医療を受けられないという事情もあり、国際社会では黙認状態になっているようです。